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NECの独立シンクタンクIISEも注目。SDGsで最近話題の「TNFD」ってなに?

NECの独立シンクタンクIISEも注目。SDGsで最近話題の「TNFD」ってなに?

#SHOW CASE
  • 気候変動に具体的な対策を

2023 年10月26日、NECグループの独立シンクタンクである国際社会経済研究所()が主催となって行う、IISEフォーラム 2023 秋が開催。今回のフォーラムでは、IISEが注力する環境Thought Leadershipがテーマとなりました。
本記事では、フォーラムのなかでも、ネイチャーポジティブや TNFDにまつわるセッションをレポートいたします。セッションは「自然との調和に向けた新たな産業変革への挑戦」と題し、昨年秋からIISEの理事に就任した宇宙飛行士の野口聡一氏が、TNFDの策定メンバーである原口真氏と国内のIT業界では初となるTNFDレポートの作成に携わったNECの井出昌浩氏を交えて、議論を交わしました。
本セッションは、生物多様性による自然リスクを、企業の好機として捉えるためのフレームワークと実践についての講演となっていましたが、注目すべきポイントは、一見して環境とは遠いように感じるICT業界大手のNECにおいても、TNFDに従い情報開示をしており、事業機会の発見に繋がったとして紹介されている点です。今後は、環境汚染産業といわれている業界に限らず、必須の開示情報になっていくのではないでしょうか。

今回の記事でわかること

✓ TNFDとは
✓ ネイチャーポジティブとは
✓ 実際にTNFDレポートを出した企業が考える「TNFDの視点で見る」意味

TNFDとは

生物多様性の情報開示のための枠組みの決定版といわれ、金融機関や企業に対し、自然資本および生物多様性の観点からの事業機会とリスクの情報開示を求める国際的なイニシアティブのことです。正式発足から2年で、世界1,150以上、日本では130以上の組織が名を連ねています(2023年7月現在)。
TNFDは「Taskforce on Nature-related Financial Disclosures」の略であり、日本語で「自然関連財務情報開示タスクフォース」と訳されます。世界の金融の流れを、自然にとってマイナスの状態からプラスの状態へとシフトさせるようサポートすることを究極の目的と考えています。つまり、環境汚染企業に対する多額の融資などを行うといった自然に対して悪影響を及ぼす可能性の高い金融取引や投資傾向から、自然環境に対してポジティブな影響を与える方向に変えることを指しており、環境に配慮した投資や事業展開、環境リスクへの対処などを通じて、金融活動が地球環境に対してポジティブな影響を与えるよう変革を促しています。
TNFDには合計14の開示項目があります。それらの項目を開示するために、事業と自然の関係をバリューチェーン全体にわたって分析し、リスクと機会を把握し、それに対して目標や計画を考えることが必要です。
このTNFDですが、世界5大陸から34名のタスクフォースメンバーが選出されて、2021年10月からフレームワークの開発が始まりました。今回、講演をしてくださった原口氏もアジア代表として選ばれた一人です。原口氏は講演で『世界で我々人間が食べている作物の上位100種のうちの90%が昆虫の受粉に依存しています。ですから、食料生産の70%ほどが、この花粉媒介機能がないと実をつけられません。今年は、ハウス栽培のトマトやいちごも、ミツバチが気温上昇により活気を失い、十分な蜂が農家に行き渡っていませんでした。気候変動と自然関連のリスクが相交じった事象がもうすでに顕在化しつつあります。』と述べ、TNFDでの情報開示は『単なるリスク回避ではなく、我々にとってはポチュニティである』点を強調していました。

ネイチャーポジティブとは?

原口氏はネイチャーポジティブの重要性を提唱しています。ネイチャーポジティブとは、企業・経済活動によって生じる自然環境への負の影響を抑え「生物の多様性を維持する」という従来の発想から大きく踏み込んで、「生物多様性を含めた自然資本を回復させる」ことを目指す新たな概念であり、近年、企業経営において重要性を増しています。原口氏は講演のなかで、SDGsのウェディングケーキモデルを見せ、一番土台となっているのが自然環境であると解説。

また、これまでの日本経済に対し『昭和時代のビジネスモデルにおいて、社会や環境の課題は経営者にとっては外部経済でした。当時の日本社会は、地下資源も労働力も潤沢で、高品質なものを低価格で提供することが企業の存在価値でしたが、それによって、社会や経済に対して、ネガティブなインパクトをもたらし、企業経営の安定性を脅かし始めています。この危機を変えるためには、自然資本を自分たちの重要な経営のための資本として、内部化していく、そういったビジネスモデルに変えることです。また、人的資本と言われる人の問題も、自分たちの重要な資本として内部化していく。その上で、人を幸せにし、地球を豊かにし、そして社会を繁栄させるといった価値を提供していくべきで、これはTNFDでも、目指している究極の目的になります。』と自然や人を起点としたガバナンスの改革を訴えかけました。
『億万長者たちの妄想を除けば、プラネットB(地球に代わる惑星)は存在しないのです。by アントニオ・グテーレス国連事務総長』

「TNFDの視点で見る」とは?

原口氏の話を受け、NECの井出昌浩氏からは、ネイチャーポジティブの実施にあたり、デジタルやITの力をどう上手く活用していくのか、なぜNECがTNFDレポートを開示するに至ったのかといった説明とともに、参加企業に対し『社会の資本を未来に渡って持続的に活用していくためには、CSRの延長ではなく、取り組んでいかなければならない責務です。ただし、新しいことをすべて人の力で取り組むことは現実的ではないので、デジタルやITを取り入れることで、サステナブルに運営していくことが必要である』とネイチャーポジティブとDXの組み込み方を述べ、また、情報開示にあたって、サステナブル部門だけではなく、事業部門や製品部門など25部署、約80名で検討を行ったことを明かしました。トークセッションのなかでは、開示を行うためにさまざまな分析を行って、ネイチャーポジティブの視点で見ることで、リスクだけではなくビジネスモデルを変えるような機会も多くあると、義務のように感じる企業に対し、機会を逃さないようにとNECでの経験を語りました。

まずは始めてみよう

会の冒頭、IISE理事の野口氏からは、IISEの環境に対する基本姿勢を『IISEはICT企業のNECの中で、「ビジュアライズ(見える化)」「アナライズ(解析)」「リアライズ(社会実装)」という3つの形で環境に関するいろんな問題を、デジタルツイン上で、解析し、それをどう社会に戻していくのかを考えていきます。社会実装とデジタルをスパイラルで回し、課題を解決していきます。』と説明しました。
また、挨拶として、つい最近劇場公開された「ゴジラ」と手塚治虫の代表作にして不朽の名作である「火の鳥」を話題にあげ、試写会で観た2作品ともに、環境問題がテーマであったこと、また、世界経済フォーラムが毎年発表しているグローバルリスク報告書に書かれた、長期的なリスクについては、実にトップ10のうちの6個が環境問題になっていることなどを語られ、IISEが注力する環境問題がいかに、日常的な題材になってきているのかを感じさせました。
今回のフォーラムは招待制となっていましたが、多くの企業が参加しており、関心の高さが伺えました。最後に、読者のみなさまへ朗報です。ここまでお伝えしてきたTNFDは「getting started campaign」を実施中です。まずは、始めてみましょうということで、TNFDを採用するという宣言を募集しています。1月10日までにwebサイトから登録いただくと、2025年1月に行われるダボス会議で、TNFDのアーリーアダプターとして、企業名が公表されます。ぜひ、トライしてみてください。

企画・執筆 / 内村


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